変形性膝関節症(英: Osteoarthritis of the knee)は、膝関節の軟骨が徐々にすり減り、関節の変形や痛みを引き起こす慢性の病態です。ここでは、変形性膝関節症の詳細について説明します。
関節の構造
膝関節は、大腿骨、脛骨、膝蓋骨(膝の皿)の3つの骨から構成されており、それらの骨の間には滑らかな軟骨が存在します。軟骨は関節の動きをスムーズにし、衝撃を吸収する役割を果たします。
変形性膝関節症の進行
軟骨がすり減ると、以下のような変化が起こります。
- 関節の摩耗: 軟骨が薄くなり、骨同士が直接接触することがあります。
- 骨棘(こつきょく): 摩耗した軟骨の周囲に骨の突起が形成されることがあります。
- 滑膜の炎症: 関節の内側を覆う滑膜が炎症を起こし、関節液が過剰に分泌されることがあります。
症状
初期症状
- 関節のこわばり: 朝起きたときや長時間座っていた後に感じることが多いです。
- 痛み: 運動時や体重をかけたときに痛みを感じます。
進行した症状
- 持続的な痛み: 休んでいるときでも痛みを感じることがあります。
- 関節の腫れ: 滑膜の炎症により、関節が腫れることがあります。
- 動きの制限: 関節の動きが制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。
- 関節の変形: 骨棘の形成や軟骨の摩耗により、関節が変形することがあります。
原因
- 加齢: 年齢とともに軟骨がすり減ることが一般的です。
- 関節の過剰使用: 運動や仕事で膝に負担をかけることが多い場合、リスクが高まります。
- 性別: 女性は男性よりもリスクが高い傾向があります。
- 遺伝: 家族歴がある場合、リスクが高まることがあります。
- 肥満: 体重が膝関節にかかる負担を増加させます。
- 外傷: 過去の膝のケガや手術がリスクを高めます。
- 筋力の低下: 筋力が低下すると、関節の安定性が損なわれます。
変形性膝関節症の診断
診断方法
- 問診と身体診察: 症状や既往歴、生活習慣について詳細に質問し、膝関節の状態を確認します。
- 画像診断:
- X線: 関節の隙間の減少や骨棘の形成を確認します。
- MRI(磁気共鳴画像): 軟骨や靭帯の状態を詳細に評価します。
その他の検査
- 関節液の分析: 滑膜の炎症が疑われる場合、関節液を採取して分析します。
変形性膝関節症の治療
保存療法
- 薬物療法: 鎮痛剤、抗炎症薬などを使用します。
- 理学療法: 筋力強化、柔軟性向上、姿勢改善を目指した運動療法を行います。
- 生活習慣の改善: 体重管理、適度な運動、正しい姿勢を心がけます。
介入療法
- 関節内注射: ヒアルロン酸やステロイドを関節内に注入し、炎症を抑えます。
変形性膝関節症の予防
- 適切な体重管理: 適正体重を維持することで膝への負担を軽減します。
- 筋力強化: 大腿四頭筋やハムストリングスなどの筋力を強化し、関節の安定性を保ちます。
- 柔軟性の向上: ストレッチを行い、関節の柔軟性を維持します。
- 正しい姿勢と運動方法: 正しい姿勢を心がけ、適切な運動方法を学びます。
変形性膝関節症は多くの高齢者に見られる疾患ですが、適切な予防策や早期の治療介入により症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。日常生活の中で膝の健康に注意を払い、早期の段階で医療機関を受診することが重要です。